旅行記2025 DIC川村記念美術館(千葉県)

さよならDIC川村記念美術館

2025年3月末をもって、筆者の大好きな場所がなくなることになりました。

千葉県佐倉市の緑の中にたたずむ「DIC川村記念美術館」です。

「DIC川村記念美術館」は現代美術を中心に、20世紀美術を主に収集・展示する「私設美術館」。
広大な敷地に美術館、茶室、レストラン、3万坪の庭園、そして大声で鳴く白鳥もいます!
すばらしい美術館です。

公式サイトから引用するなら、「作品」「建築」「自然」の三要素が融合した美術館でした。

筆者の趣味は美術館巡りです。

しかし、川村記念美術館ほどのスケールと寛大さをもった私設美術館を他に知りません。

もっとも、川村記念美術館自体は「なくなる」ではなく、都内へ「ダウンサイズ&リローケーション」するらしいです。

筆者はこのロケーションの川村記念美術館で過ごす時間が大好きでした。

なので、今回の移転は残念としか言いようがありません。

今回の移転には地域住民や文化人から反対運動もありました。
また、過去にはコレクション売却もありました。今回の移転経緯にもお金の話が多く、悲しい気持ちになりました。

しかし、そこは私設美術館ですから、鑑賞者の手の届かないところだとは思っています。

逆に、筆者は、今まであれほどの環境とコレクションを、入場料だけで提供してくれた母体企業とその理念には感謝の思いです。

しかし、同じく現代美術を中心に収集、展示している「原美術館」が、東京・品川から、群馬・渋川に移転した意味合いとは、異なるベクトルを感じることも否定はできません。

ここ数年、個人サポーターズとして参加させていただきました。
*年会費をお支払いして、お安く鑑賞させていただいただけですが。。。

ロスコルームだけじゃない!企画展の魅力

川村記念美術館といえば、マーク・ロスコの壁画。
世界で4カ所しかないロスコ作品のみの展示空間「ロスコ・ルーム」が有名でした。

また、常設展においても、シャガール、ピカソ、モネ、カンディンスキー、レオナール・フジタ、から、ジャクソンポロック、ウォーホール、ステラまで、間口の広い展示で美術の魅力を発信してくれました。

ロスコルーム DIC川村記念美術館公式HPより

川村記念美術館で年数回行われる企画展では、実験的な芸術やデザイン運動の歴史などを取り上げることも多く、芸術にそれほど詳しくない筆者から見ると、「これ、お客さんは入るの」と思ってしまうことも何度かありました。
しかし、これもまた、美術館の使命をまっとうする美術館らしい美術館。という印象がありました。

クリスト&ジャンヌ=クロード夫妻

シドニーの海岸を布で覆う、コロラド州の数百メートルの渓谷に布を掛けハイウェイを遮る。
セーヌ川に架かる橋を布で包む。

1960年代から公共の場所を含む、道路、建物、橋、はたまた自然環境を舞台として大掛かりなプロジェクトに着手し、制作のプロセス自体を作品とし、社会と芸術の接点を主眼とした芸術家です。

カール・アンドレ

1960年代後半~アメリカを中心としたミニマル・アートを代表する彫刻家です。

並べられた大きな建材、レンガ。立てられ、並べられた鉄板。

自然に囲まれ、静かで、余白のある川村記念美術館にとても似合う作品であり、作品の持つ重量感、匂い、材質のディテールが静かに伝わる、筆者にとっては印象深い展覧会でした。

混雑、混乱、熱狂、DIC川村記念美術館

2025年3月中旬。川村記念美術館にお別れをすべく、平日の午前中、早い時間に伺いました。

もちろん、事前にHPで確認し「閉館間近となり来場者が増加し混雑しております」とホームページで拝見していました。

しかし、実際には筆者の予想を大きく超える混雑と、混乱ぶり!

通常では、8割以上空いている大きな駐車場は満車!

近接するグラウンドが臨時駐車場として開放されていましたが、誘導員さんもごくわずかで、グラウンドへの出入り口は1ヵ所のみ。しかも車両がすれ違えない幅なので、とまどう来場者が続出のようでした。

なんとか入場できましたが、普段の静かな川村記念美術館とはうって変わり、まるで上野界隈の美術館並みに混雑しておりました。

大声で話すおっちゃん、おばちゃん。
展示物の写真撮っちゃう人。
歌う子供!

ロスコルームへの入場は制限が設けられ、入場待ちの長い行列ができていました。

いつも清潔でセンスの良いお手洗いも、軽く乱れておりましたし。

でも、筆者はとても心地よく最後の鑑賞ができました。

最後の企画展は、川村記念美術館のコレクション全部出しという感じでした。

筆者は作品自体を鑑賞するより、最後の川村記念美術館を楽しもうという気持ちでした。

お別れは、にぎやかなほうが良いですし、たとえ最初で最後の観覧者が多数であったとしても、多くの人がこの美術館を見知ってくたことがとてもうれしい気持ちでした。

写真2枚目の地図上で、一番下に示されているのが美術館。

広大な敷地と、豊かな自然の中で美術鑑賞ができる贅沢さがありました。

さて、今後の話。

川村記念美術館のコレクションの一部は、六本木の「国際文化会館」に移転されるとのことです。

ところで、筆者は「国際文化会館」のことを存じませんでした。

どうやら、美術、芸術とは直接関係のない団体のようです。

しかし、2030年に六本木に建設される国際文化会館の新館展示施設は、川村記念美術館と共同で運営されるらしく、ロスコの壁画は、建築ユニットSANAAが設計する常設展示室「ロスコ・ルーム」に展示されるようです。

あらたな「ロスコルーム」がどのような形になるのか、その点は楽しみです。

また、六本木に「作品」「建築」「自然」の三要素が融合した美術館ができるのであれば、それも楽しみでしかありません。

2030年、生きていれば会いたいものです。

おなじく現代美術を中心に展示している群馬県渋川市、原美術館ARCの記事はこちら。

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